クロシェの新しい考え方に共鳴

クロシェファン回帰にあたって、最も刺激を受けたのは、岩切恵実さんの本である。表紙には日本の実用本しかもファッション系では珍しくアフリカ系の女性のネックがアップになった写真が使用されている。

編み図やゲージにこだわらず、作りたいものに向かって自由に編む、リメイクやリフォームの手段としてクロシェを考えるというコンセプトに大いに影響を受けてしまった。大昔の私流の編み物は、多少色の違いはあっても、編み図のとおりに編み、間違えたら間違えたところまでほどいてやりなおすという、完璧な「作品」をめざしていた。ほどいた糸がひどくからんでしまい、泣き出してしまったこともある。いまから考えるとばかばかしいほど、趣味でストレスを作っていた感じ。結局他人の考案したアイデアのとおりに作品を作ることに満足していたにすぎない。

これに対して、海外のKnitサイトで使われる「プロジェクト」という言い方には、他人のアイデアは参考にするが、自分が作りたいものは自分だけのオリジナルだという意思が表れているように思える。自分はこういう形と色のものを作りたい、それに向かった結果がこういうものなの、悪くないでしょ?という自己表現なのである。21世紀になって、爆発的にニット人口が増えたことにはもちろんインターネットの普及が寄与している。ゲージやサイズによる糸量計算の自動化はもちろん、自動翻訳によって、外国語による編み方の理解も格段に楽になっている。趣味の実用本出版にしがみついている日本の出版界とは異なり、若い世代の個人サイトはもっと知的に豊かに展開しているし、編み図のみを販売していく海外のサイト構成は奥深いけれど軽やかである。

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